こんにちは。Sotoe代表の小杉です。
突然ですがみなさんは災害が発生したとき、自分がどこに避難したらよいのかご存知でしょうか?近年自然災害が多発しているのでさすがに避難先は把握しているよ!という方は多いかもしれません。
では、その避難先でどんな食べ物が配られるのか知っていますか?どんな備品が配られるのでしょう?ましてや食物アレルギーがある人が食べられるものが配給されるのかどうか、ご存知ですか?
今回は「災害が発生したときに避難先では何が配られるのか?」を知りたくなった私が、神戸市の担当部署にお話を聞きに行って初めてわかったあれこれをお伝えします。
※私は防災の専門家ではありません。イチ市民として神戸市にお伺いしたことのみをお伝えします。
※令和2年7月現在の情報です。常に最新の防災計画をご確認ください。
分かったこと総まとめ
ついつい長くなってしまったので、先に分かったことを簡単にまとめてお伝えします。
・災害用の備蓄品は各自治体がそれぞれ独自の防災計画にそって備蓄している
・自治体によっては避難所に備蓄品を置いていないところもある
・備蓄品の種類・数は各自治体によって大きく異なる
・神戸市は20万人が3日分過ごせるくらいの備蓄品を保管している(かなり多い方)
・神戸市では28品目フリーのイタリアンリゾットとエネルギーバーを備蓄している
・まずは自分の住んでいる地域の防災計画や備蓄品を確認しよう
・備蓄だけではなく地域住民や自治会など横のつながりが大切
それぞれ詳しくお話をしていきます。
なぜ神戸市に問い合わせようと思ったの?
2020年7月7日NHKニュースサイトにて【大雨 被災地域を対象に食品表示の一部緩和へ 】というニュースを見つけました。
読んでみると「災害発生時は原材料の表記が無くても良い(ただしアレルギー表示と消費期限は必須)」といったものでした。私は思わずえ?と声を上げました。
1.28品目以外のアレルギーがある方は原材料表示がないと食べられない
2.特定7品目の表記は義務だが21品目は表記推奨。よって21品目のアレルギーがある方もアレルギー表記がない場合があり原材料表示がないと食べられない
3.「しょうゆ」由来の小麦だと食べられる小麦アレルギー、「乳糖」由来の乳成分だと食べられる乳アレルギーなど、アレルギーであっても非常に多くの方が食べられるアレルゲン物質があり、患者さんたちは「原材料を確認すること」によってその食材を食べられる・食べられないを判断している。原材料表示がなく「小麦」「乳」とまとめられて表記されるとただでさえ食べられるものが非常に限られている食物アレルギー患者さんがさらに食べられるものが限られてしまう
なぜこのような通知を行なったのか経緯が知りたいと思った私が消費者庁に連絡をしたところ、このような返事が帰ってきました。
「今回は1番包括的に食料をとどけるようにするためにそのようにした」
「原材料は外箱には記載するなどできる限り配慮をお願いしている」
「食物アレルギーがある人に向けて特に国から(自治体等へ)の指示はしていない」
「災害時の備蓄については各自治体に確認をして(食物アレルギー配慮できないか)お願いをしてほしい」
と。きっと原材料表記が無くてもいいですよ!が言いたいのではなくてやむを得ない場合に限りそういった対応も認めますができる限り配慮はお願いします。ということが言いたいのだと思います。
ですが食物アレルギーがある娘を持つ私としては不安はぬぐえません。これは自治体に確認するしかない!と思い、早速神戸市の担当の方にお会いをして防災体制について色々とお伺いすることにしました。
災害用の備蓄品ってどこにあって誰が管理してるの?
災害が発生したときになんとなく…
国とか大きな機関が私を守ってくれるんだよね?
と思っている方が多いと思います。もちろん国も救援物資を送るなど大きな役割を担っているのですが、実はかなり大きな役割を担っているのが【県や市などの各自治体】です。
どこにどんな物資を備蓄しているのか、どういう体制で避難所を運営しているのかは各自治体が管理をしています。
※神戸市でいうと「神戸市」や「各区役所」、さらに細かく分けると各地域の自治会や防災チームなどが避難場所や備蓄に関わっています。
なぜ自治体(や自治会)が管理しているの?
それぞれの地域特性に合わせた防災体制を組まないといけないからです。
例えば神戸市の場合だと、南海トラフ地震、斜面が多いという地形、海からの被害、などが想定されます。豪雪地帯ですと雪の被害、台風の直撃が多い地域でしたら台風被害への対策等、それぞれの気候や地形に合わせた防災計画が必要になります。
こういう地域の特性にそった細かい対策については国主導ではうまく管理ができないため、各自治体やさらに細かい自治会等が管理しているということでした。
神戸市の備蓄体制は?
各自治体によって防災計画というのが異なり備蓄している種類や量もかなり異なるようでしたが、神戸市の例をお伝えします。(全て公開されている情報で共有しても大丈夫とのことでしたので共有します)
※あ〜神戸市かぁ。関係ないなと思わずに1度目を通していただけると嬉しいです。自分が住んでいる自治体と比較して、神戸市はこうしてるけどうちはどうかな?とまず疑問をもつことが大事かなと思っています。
備蓄の種類は4種類
神戸市では「備蓄」を4種類に分類しています。
■市民備蓄
市民が自分たちで持ってくる非常持ち出し品です。
■流通備蓄
例えばコープやダイエーなど神戸市が協定を締結している業者等から提供される物資です。
■現物備蓄
各避難所等に備蓄されている、神戸市が用意している備蓄品です。
■救援物資
国や他の自治体等から調達される物資です。
これらの備蓄品がこのような時系列で動くことを想定しています。
これら4種類の備蓄を避難者が20万人いると想定して3日間は過ごせる食料・物資を確保しているとのことでした。
(今後20万人を30万人に拡大してさらに備蓄量を増やしていく予定とおっしゃっていました)
この神戸市の備蓄量はかなり多い方で他都市だとあまり備蓄していない都市もあるとお伺いしました。
どこに備蓄されているの?
神戸市の備蓄保管場所は大きく分けて「地域備蓄拠点」と「総合備蓄拠点」があります。
1.地域備蓄拠点とは?
みなさんが想像するいわゆる「避難所」のことでその「避難所」に備蓄品が保管されています。(厳密に言うと保管されている場所と保管されていない場所があります(後述))
※避難所一覧はこちらです。
https://www.city.kobe.lg.jp/a46152/bosai/prevention/evacuation.html
※小中学校以外の施設はこちらです。(平成29年4月1日現在)https://www.city.kobe.lg.jp/safety/prevention/supply/img/01-08_sankou1.pdfより抜粋
公立小中学校等とその他施設、合計316箇所にそれぞれ100~400人程度(地域によって違う)の現物備蓄が備蓄されています。
「緊急避難場所」とは、命を守ることを最優先に、災害の危険から逃れるための場所です。「避難所」とは、自宅が被災して帰宅できない場合に、一定期間、避難生活を送るための場所です。-神戸市HPより抜粋
そして神戸市の場合備蓄品が置いてあるのは「緊急避難場所」ではなくて「指定避難所」です。緊急避難場所は大きな公園など一時的に避難する屋外の避難場所がほとんどです。(緊急避難場所兼指定避難所の場合は屋内施設です。また緊急避難場所でも一部屋内の緊急避難場所もあるようです。詳細は神戸市のHPをご確認ください。)
※全ての指定避難所に現物備蓄が備蓄されているというわけでもありません。どこに備蓄されているのかは内部文書で管理しているそうで一般には公開していないとのことでした。ですが避難所に行って備蓄がなかったとしても総合備蓄拠点(後述します)等ですぐに手配をするようになっているとのことでした。
地域備蓄拠点の備蓄の様子はこちらです。
2.総合備蓄拠点とは?
地域備蓄拠点以外に備蓄品を置いている拠点です。
局所的な被害の場合など、ある地域に集中して被害が起きた場合は各避難所に大変多くの住民が避難することも考えられます。その場合、備蓄している食料が足りない等の問題が発生するので、下の図の総合備蓄拠点に日頃たくさんの備蓄品を置いておいて、各避難所から備蓄品を送ってほしいといった依頼があった場合すぐに届けられるような仕組みになっています。
総合備蓄拠点の様子はこちらです。
他の自治体等では総合備蓄拠点のような「一箇所に備蓄」していて避難所には備蓄していないという地域もあるようです。神戸市が各避難所に備蓄品を置いているのは阪神淡路大震災の時に、1拠点からの物資の発送だと物資が現場に届くまでに時間がかかってしまうという教訓があったからだそうです。
なのでまずこの地域備蓄拠点で広範囲の備蓄をカバーして、足りない物資を総合備蓄拠点から発送するという方法をとっているとのことでした。
神戸市が備蓄している物資一覧
それでは具体的に神戸市が備蓄している物資はどのようなものなのか、見ていきましょう!
各避難所等に備蓄されている品目はこちらです。
飲料水・食料品・災害用毛布・粉ミルク・生理用品・紙おむつなど様々なものが備蓄されています。
なかでも主食が28品目フリー+ハラール認証フードのイタリアンリゾットなのですが、全員に配給するものを既に28品目フリーにしてくれているんだなと驚きました。
理由は「こっちはアレルギー対応のもの、こっちは一般の人のもの、となると現場で混乱が生じる可能性が非常に高い。だから最初から統一して28品目フリーにしている」とのことでした。
そして神戸市には外国の方も多く住まわれているとのことで、以前はハラール認証フードではなかったのですがここ数年でハラール認証のものに変更されたそうです。
また、以前はアルファ化米を備蓄していたのですが、「水が手配できないと食べられないものではなく水がなくても食べられるものを備蓄しよう」という方針になり変更になったそうです。
(※この点は阪神淡路大震災の被災経験がある私も強く思っています。インフラが壊滅的になるような大きな被災直後は水が手に入りづらく、水で調理をする気にはまずなりません。水は飲み水として利用するので、被災直後は水を使わなくても良い非常食を準備しておくことが大切だと思っています)
他にも28品目フリー+ハラール認証フードのエネルギーバーや、糖尿病の方向けの糖質が抑えられたはんぶん米なども備蓄されています。
食物アレルギー以外の色んな食事制限がある方にも配慮された備蓄品なんだなと感じました。
ですが一方で私はどうしても「28品目以外のアレルギー患者さん」のことが気になったので「例えばトマトアレルギーがある方はこのリゾットは食べられない。そういう場合はどうしたら?」とお尋ねしてみました。
すると、そしたらまずはこのはんぶん米をお渡しすることになるかもしれませんが、こういうアレルギーがあってこういうものがほしいということでしたら、「流通備蓄」等でとどけるように手配します(物流が寸断されていなければ1日程度)とのことでした。
この備蓄食料の種類も自治体によってかなり変わります。神戸市は備蓄数や種類も多い方です。少し調べましたがほどんどの地域はアルファ化米という水が必要な備蓄品を備蓄していますし、地域によっては備蓄食料が無い(近くの別の地域から配給する)等もあるようです。
それぞれの地域がどういう防災計画を立てていてどういう備蓄品があるのかなどをまずはチェックしてみましょう。チェックすると何を用意しておくべきなのかが見えてくるので、それに基づいて自宅に保管する備蓄品を必ず用意することが大事です。
コロナ禍における避難所運営は?
コロナ禍における神戸市の避難所運営に関してわかりやすい動画(サンテレビニュース動画)がありましたのでご紹介します。
動画内にも出てきますが神戸市では避難をする際にホテル・旅館などの宿泊施設を利用した場合、助成金がおりる新たな制度ができました。
■神戸市HP(ホテル・旅館などの宿泊施設への避難にかかる助成)
対象者は以下のとおりで、他にも要件がありますので詳しくは神戸市HPをご確認ください。
①妊娠中の方
②乳児(平成31年4月2日以降の出生)を養育中の方
③重症心身障害児者(身体障害者手帳1,2級かつ療育手帳A)とその介護者
同一世帯や日常的な介護者が同行避難する場合は、その方も対象
非常時に備える備蓄品リスト
神戸市さんから非常時に備える備蓄品リストをいただいたのでご紹介します。
その他食物アレルギーがある方はこちらをぜひ参考にしてください。
一般社団法人LFA Japanさんから発行されている防災ハンドブックです。食物アレルギーがあるとどんなことに注意しておいたらよいのか、どんなものを備蓄しておいたほうがよいのか、とてもわかりやすくコンパクトにまとまっています。
お話を伺って印象的だったこと
実際にお話を聞いてみると色々なことが分かったのですがその中でも特に印象的だったのがこちらです。
1.各自治体によって備蓄している量や種類、想定している被害などが大きく異なる
お話を聞く前までは災害備蓄品はどの地域でもある程度同じなのかな?と思っていましたがそれぞれの県や市で全く異なることがよく分かりました。さらに県・市・区・町・村・自治会などでそれぞれ違うものを備蓄していたりもします。
まずはお住まいの地域でどのような防災計画がありどこに誰がどんなものを備蓄しているのかを確認することをオススメします。
2.被災時だからこそできるかぎり同じものをという配慮が必要
みんな同じ毛布を使っている中でたった1人高級毛布が配られたらどうなるかご想像がつきますか?行政ではそういった点も考慮して、備蓄するもの・配給するものを決めているそうです。
私自身も私の知人が阪神淡路大震災の時に「あんたの所はええな。家が潰れんかったんやからこんな所おらんでもええやろ」など辛辣な言葉を投げかけられたというエピソードを聞いたことがあります。
また、食物アレルギーがある方が地域の防災訓練に参加した際に「1人だけ種類の違うもの(アレルギー配慮のもの)」を配布され、後ろの列に並んでいた人に「なんであの人だけあんなもの貰えるの?」と言われたというエピソードも聞きました。
被災者のみなさんは平時ならともかく災害時においてはより「人と違うこと」に対して敏感になっているのだと思います。
混乱のさなか「食物アレルギーがある人だけ◯◯だ」という言葉や目線が投げかけられることは容易に想像がつき、そこについて嘆くよりもまずは食物アレルギー患者さんそれぞれができる限りまずは備蓄したり関係各所と良い関係を築いておくことが大事だと思いました。
3.税金を使ってどこまでできるのかが悩みどころ
もっと備蓄品を増やせないのか?とたずねてみると、やはり「税金を使ってどこまで備蓄するのか」という点が非常に悩ましい点だそうです。予算には限りがあるので、色々と調整しながら各市町村で工夫をされているのが現状です。
4.自治体はもちろん地域住民や自治会などとのつながりも大事
お話を聞くとやはり現場を運営しているのは、区の職員・地域のみなさん・災害ボランティア団体などが大半だそうです。
日頃から地域のみなさんとの関わりを増やしたり、地域で開催される防災訓練に参加するなど、地域のつながりを意識した生活を心がけることが、いざという時にみんなで助け合う関係性を作れるのだと思いました。
まず住んでいる地域の防災計画を確認しよう
ここまでは神戸市の備蓄体制についてお話をさせていただきました。記事の中でもお伝えしましたが防災計画や備蓄品は各自治体によってかなり変わります。
自分の住んでいる地域がどういった防災計画を立てているのかをぜひ確認してみてください。
次回はより具体的に「食物アレルギーがある人はどういう点を確認しておいた方が良いの?」というお話をさせていただきます。
食物アレルギーがある人は災害にどう備える?